ファシリテーターの声
家族で互いを撮り合い、世界に1冊だけの写真集を作るワークショップ「かぞくのひづけ」が、北海道札幌市にある総面積188ヘクタールの「モエレ沼公園」で行われました。今回参加してくれたのは、0歳の赤ちゃんから93歳のひいおじいちゃんまでの8家族。年齢も人数も様々な家族構成のワークショップで、ファシリテーターが心がけたのはどんなことだったのでしょう?
ワークショップの様子
まずは家族を紹介するための「かぞくのカード」づくり。自分の家族を客観的に見つめ言葉にする作業です。家族を意識することで今まで気付かなかった特徴が見えた人も…。
写真家の広川泰士さんのアドバイスのもと、大きなカメラを持ってお兄ちゃんをパチリ!お父さんがパチリ!0歳のおチビちゃんも人生初のパチリ!と、互いを撮り合いました。
「これ、いいね」「この写真はどこに入れようか?」こどもと一緒にパソコンで編集作業をしたあと、印刷、製本をへて写真集は完成。
発表会では「息子の笑顔は前から好きでしたが、息子が撮ってくれた自分(母)の笑顔を見て、自分も好きになりました」「今日はゆったりした気持ちで家族とコミュニケーションをとることができたので、一度もこどもを怒らなかった」などの感想が。家族のきずながより一層深まった体験となったようです。
ファシリテーターインタビュー「家庭(親の立場)でのファシリテーション」
(左から)ファシリテーターの内記さんと村田さん
ファシリテーターとして活躍した村田さんと内記さんにお話しを聞きました。
「こどもは親の一番ステキな表情を知っています。その瞬間を撮ろうと照れくさそうに親の写真を撮る姿が印象的でした」(村田)。
今回のワークショップはこどもだけでなく親や祖父母の参加がありましたが、ファシリテーターとして、いつもとは違う配慮や説明はありましたか?
「ワークショップではこどもを待つ姿勢を大切にしていることを保護者の方にファシリテーターの目線でお伝えしました。こどもが自分でできるまでちょっとだけ待つこと。大人は気長にやってみてください、ということをお話ししました」(内記)。
親はこどもの言動に、つい手や口を出し過ぎてしまいがちですが、他にもワークショップに参加する/させる大人が気をつけたいことはありますか?
「こどもの制作には手を出さないこと、そして、立ち入らないことです」(内記)。
「まれに見栄えの良い作品をこどもに作らせることを目的に参加する保護者がいらっしゃいますが、ワークショップは主体性を引き出しコミュニケーションを学ぶ場ですから、ちょっと違いますよね」(村田)。
なるほど、目指すのは上手な作品ではなく、こどもの“やってみたい!”という自主性とコミュニケーションの向上ですね。では、どんな状況からこの“やってみたい!”は生まれるのでしょうか。そのために気をつけていることはありますか?
「私たちはこどもたちを誘導しすぎないことを心がけています。自分でひらめいた実感をしてもらいたいと思っているからです。ひらめきを得るたびにこどもの表情がパッと明るい顔になりますし、低学年のお子さんなどは『見て!』『見て!』と言ってきますよ」(内記)。
アイディアを認めてもらうことで、自信がつくのですね。
「ありのままの姿を受け入れることも大事ですから、失敗してもいいんだよ!という空気感も大事にしています」(村田)
自分でできた!という達成感がこどもたちの“やる気”を引き出す。そこにはファシリテーターのありのままを受け入れる温かい眼差しと待つ姿勢、そして安心して活動できる環境がありました。今後、ファシリテーションはワークショップだけでなく、新しい教育手法のひとつとして多くの家庭に浸透していていくことでしょう。
(2008年11月 取材:studio woofoo前川祐美子)