20thsym

このシンポジウムについて


SCSKグループの社会貢献活動 CAMPの20周年を記念し、ワークショップの活用・展開とその可能性、これからの社会に求められる人材育成のあり方を考えるべくシンポジウムを開催いたしました。
また、当日の開催内容についてアーカイブとして約2か月間動画を公開させていただきました。多くの方にご視聴、またご好評のお声をいただきました。ありがとうございました。
本ページでは、CAMP20周年記念シンポジウム「楽しい!が人を育てる」当日の様子をご報告させていただきます。


開催概要
開催日        2021年11月7日(日) 13:00~16:30
開催会場    オンライン ※東京大学 情報学環・福武ホールよりライブ配信
参加人数   262名(当日オンライン参加者数)


ご登壇者
基調講演 東京大学大学院 情報学環 学環長 山内祐平氏
特別講演 株式会社MIMIGURI 代表取締役 Co-CEO 安斎勇樹氏
特別講演 資生堂ジャパン株式会社 チーフピープルオフィサー兼人事副部長 田岡大介氏


クロストーク
CAMP卒業生:木村音羽さん、松瀬智仁さん、佐野佳則さん、松村歩美さん


パネルデイスカッション
NECネッツエスアイ株式会社 コーポレートコミュニケーション部 サステナビリティ・SDGs推進グループ 担当課長 鈴木正人氏
マルハニチロ株式会社 経営企画部サステナビリティ推進グループ 課長役 佐藤寛之氏
SCSK株式会社 企画本部 サステナビリティ推進部 部長 佐藤利也
 


プログラム



冒頭は、SCSK株式会社副社長 爲房孝二より開催にあたってご挨拶させていただきました。

1


第1部 ワークショップの可能性


基調講演

 

山内氏

山内祐平
東京大学大学院 情報学環 学環長
講演テーマ
「ワークショップで人を育てる-未来の学習社会に向けて」


基調講演は、「学習環境のイノベーション」を研究テーマに、情報社会における新たな学習環境について研究されている、東京大学大学院 情報学環 学環長 山内祐平様にご講演いただきました。

 

ワークショップとは 
英語で工房という意味で物が作られる場所を示す言葉だが、今は必ずしも工房がない活動にも定義が広がってきた。私自身は創ることで学ぶ活動ととらえており、ここ10~20年はワークショップの活動の中でも”創造”にフォーカスが当たる形で広がっている。

CAMPワークショップの特徴 
楽しさを主軸としたプログラム構成となっており、午前中から午後までという開催時間でも、こどもたちが集中して取り組んでいる様子を見てきた。 また、グループで協働すること、こどもたちが一緒にものごとをつくりあげる経験もCAMPの大きな特徴。それを20年間この規模で継続し、研究者やアーティスト等とつながる開放性を持ち続けていることから、他に類を見ないワークショッププログラムとして評価している。

これからの20年 
これからは、情報通信技術を活用して自分のキャリアを切り開いていく時代になると考えており、OECDラーニングフレームワーク2030では、究極の教育における目標として、みんなが幸せによりよく生きる社会に変革するための高度な能力が必要になるといわれている。 
今後の人生100年時代に、我々は未来のこどもたちにどう基盤を整えられるのか。100歳まで生きるとして、キャリアがどんどん切り替わり一生学び続ける社会になってくる。制度的な学校教育だけでは学習社会を支えることはできないため、学校外に学び続けるための文化や仕掛けが必要となる。ワークショップはその切り札になると考えている。
 

新しいワークショップ像 
ワークショップが「情動」にフォーカスした学習環境であるということをしっかりと考え、今後はこれまで培った「楽しい→フロー→創造」の論理を超えて、外向性や協調性等の社会情動的スキルが自然とワークショップの中で育つことを意識するようなワークショップが必要となる。
これまでは放課後や休日など一時的な活動であることが多かったワークショップは、学校外学習という範囲から飛び出し、類似した活動同士が協力し新たな学びの場を創成することも未来を切り開くポイントとなる。学校教育ではアクティブラーニングが取り上げられているし、企業内人材育成や価値創発型ワークショップともつながる。
 

最後に 
今回のシンポジウムタイトルは「楽しい!が人を育てる」だが、正確に言うと「人が自然に育つ楽しいワークショップをどうつくっていくか」が課題なのだろう。楽しいという感情を大事にし、長期的にみんなが学びあえる場をつくるため、越境して知恵を出し合うことが重要となる。学習は人が自らの人生を変えていくための営みであり、長い人生を豊かに生きる鍵がワークショップなのだと考えている。


特別講演

 

安斎氏

 

安斎勇樹様
株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO /東京大学大学院情報学環特任助教 
講演テーマ
「こども時代のワークショップ参加経験は、将来にどのように影響するか?」


特別講演として、まず最初に、株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO /東京大学大学院情報学環特任助教である、安斎勇樹様に講演いただきました。

安斎様はワークショプ的な考え方をどのように課題解決に使うのか、という点について研究しており、「本当にそれは楽しい、面白い活動になっているのだろうか?」を問い、それを書き換えていくことで、そんなワークショップ的な考え方を届けるワークショップの研究をおこない、企業の課題解決に広げておられます。

「こども時代のワークショップ参加経験は将来のどのように影響するか?」のテーマにて、参加者へのインタビューを元に、CAMPのワークショップに参加した経験がその後のキャリアへどのような影響を及ぼしたのか、さらに、こども向けワークショップと大人向けワークショップにはどのような関連性があるのかについて解説いただきました。
そして、現在企業で課題解決にもちいられているワークショップとこども向けのワークショップにおいて何らかのつながりがあるのかについて解説いただきました。

 

ワークショップの価値 
ワークショップの評価について悩んでいる方は多くいらっしゃると思う。だが、ワークショップはあとから価値を測るのではなく、「いま」起きている出来事を尊重するものであり、魅力がつまっていると考えている。
「目の前で起きているワークショップにどれほどの意味があるのか」という誰しもが感じる疑問に対して、実際のところ”将来”や“大人になってからの経験”にどれほど影響があるのだろうか、ということを研究した。 

CAMPでは20年間継続して活動しており、その1つひとつのワークショップの詳細を記録・保管している。いつ誰がどのワークショップに参加していたか、ということも残っている。
そこで、小学生時代に10回以上CAMPワークショップに参加していた人たちに調査依頼の連絡を取り、13名の方に主観的な視点でのインタビュー調査を2017年に実施した。 
 
CAMP卒業生へのインタビュー調査 
 卒業生たちに対しては、あくまで研究調査であるから、忖度なく様々な質問に対してフラットに回答してほしいとお話し、研究者としてヒアリングした。その結果様々なエピソードを語っていただいた。 
 
長期的な影響について 
13名中12名影響があったと回答したエピソード分類が「好奇心や興味関心の深まり」。多くの対象者が好奇心や興味関心が刺激されたエピソードを想起し、人生への強い影響を語ってくれた。中でも予想外だったのが「趣味が増加し深まった」と言及した方が9名もいたことで、その多趣味さに大変驚いた記憶がある。 
「リーダーシップの向上」でリーダーを担ったことが、その後の活動でのリーダーシップにつながったという回答も複数あった。 
さらに、「キャリア選択への影響」も興味深く、参加したファッションがテーマのワークショップがきっかけで服装に興味を持ち、アパレル企業への入社を目指しているというキャリア選択に直結した例もあった。 
全く同じワークショップに参加してもそれぞれで記憶のされ方が違っており、それが現在への影響に大きく結びついているという点が研究者として非常に面白く感じた。 
CAMPでは「よい作品」よりもプロセスを重視している。自分の中に判断基準を持ち、いいものをつくるというよりはプロセスに自分が納得し、こだわりが発揮できるものをつくろうとする力を育んだというエピソードだった。 
以上が、CAMPへの参加経験が今に直結しているエピソードで、あくまで主観的なライフストーリーを測定したものだが、リアルなエピソードと感じた納得のいく調査結果となった。 
それを支えるCAMPの学習環境として、ファシリテーターの支援やテーマの多様性など様々な要素が影響していたということで、あらためてCAMPがこだわってつくってきたものが学習と結びついていることが確認できた。 
 
最後に 
このインタビュー調査を通して感じたのは、卒業生たちはみなさん共通して「新しい扉」をひらく力がとても大きいということ。未知なるものに対してストレスを感じることなく飛び込んでいけるという力が育まれていると感じた。 
それらは、これからの社会に求められている、「いい作品をつくるということだけではないクリエイティビティ」のヒントになると感じている。 


特別講演

 

田岡氏

 

田岡大介様
資生堂ジャパン株式会社 チーフピープルオフィサー兼人事副部長
講演テーマ
「企業の人材育成・組織開発におけるワークショップの可能性」


特別講演の2つ目として、資生堂ジャパン株式会社 人事部 人事副部長である、田岡大介様に講演いただきました。 

 

 

はじめに 
これまで、ワークショップの領域が広がっているという話があったが、企業では実際にどのような意図でワークショップをおこなっているのかということを話していきたいと思う。 
所属している株式会社資生堂には約4万6千名の従業員がいるが、今回はその4万6千名が全員対象となったワークショップの事例についても話していきたい。 
企業がワークショップを使うときの期待として、「物事を深く理解して自分事化をしてほしい」「参加者同士の創発で何か学び合ってほしい」「一過性にさせず腹落ちして帰ってほしい」等の場面で使うことが多いと考えている。そのうちの2つの事例を紹介していく。

ケース1:企業理念(行動原則)の浸透 
資生堂社員が仕事をするうえで大切にしている「OUR PRINCIPLES」(「TRUST8」という名の8つの心構え、行動原則)を全社員に自分事として理解してもらうにはどうすればいいかと考えた際、手法としてワークショップを用いた。 
具体的には、まずSTEP1でTRUST8の8つ行動原則の中から自分がもっとも重要だと思うプリンシプルを選んでもらうところからはじまる。
次のSTEP2では、8つに加えてオリジナルの1つを考え、既存のものの代わりに追加してもらうというワークを実施。これは、このTRUST8を自分事にするためには、自分で手を加えて編集するという行為を通じて、上から与えられたものではなく自分事としてこの行動原則をとらえられるのではないか、という考えのもとおこなった。
STEP3 では、ワークショップ会場の中だけでなく外にも飛び出して、手足を動かしながらTRUST8の行動原則をイメージしたポスター写真を撮影するというワーク。 
世界中にほぼ同時に展開したが、どの場所からも楽しい様子が伝わってきた。そこから「楽しい」ということの、ワークショップにおける可能性を感じた。 

ケース2:「仕事を通じて成長する」ために必要なことを理解してもらう 
仕事を通じて成長することを体感してもらいたいとい考えて初めて部下を持つ管理職や、新入社員に実践したプログラム。仕事を通じて学ぶことは多いと思うが、では実際はどんな仕事を通じてどんな成長をするのかを考えた時、「新しくて難しいことにチャレンジすると成長する」「うまくいく・いかないの原因を考えるという経験学習を通じて人は育つ」などが挙げられる。そういった「理論」をまずは伝える。
本当にそうなのかを体感知として腹落ちしてもらうために短時間のワークショップを行う。 
具体的には、数人のグループで3分間でレゴを高く積み上げることにチャレンジしてもらい、どのチームが一番高く詰めるかを競う。1回目が終了後、うまくいった/いかないを作戦会議し、5分後にもう一度同じことにチャレンジをしてもらう。 たいていのチームが1回目より高くつめる(成長がある)。ただ高く積もうとしすぎて時間ギリギリで倒してしまうチームもある。
何が楽しかったかと聞くと、チャレンジしたこと、高い目標を目指したから、目標が共有され一体感があった、できた時の達成感、などが挙がる。実際の仕事でもそういうチャレンジがあったり、学びがあったりして成長するってことがあるはずだから、こういう楽しさがもっと仕事でもあっていいですよねと問いかけると、参加者は納得していた。単に経験学習という理論を説明して理解してもらうだけとは、全然違う腹落ち感を持って帰ってもらえていると思う。
 

企業におけるワークショップの可能性 
どのような場面でワークショップが有効なのか。 
自分たちも当事者としてつくることに関与するという点。 そして、遊び心があって楽しいからこそ得られる体感知・腹落ち。そしてさらに、新しい知がうまれる場面ではないか。
様々なバックグラウンドや意見を持った人たちが集まり一緒のものをつくるという行為が今後重要になってくるが、そういう場面でワークショップは非常に有効に機能する。これらを、ワークショップの可能性と考えている。


クロストーク

 

ご登壇者

安斎勇樹様 × 田岡大介様 × CAMP卒業生 × 新谷美和(CAMP)
モデレーター:山内祐平様
CAMP卒業生

 

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木村音羽さん
CAMPワークショップに22回参加。ご家族でCAMPのファンで、妹さん、従妹の方にも参加いただき、木村さんは現在、化粧品会社本部にお勤め。
 

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松瀬智仁さん
CAMPワークショップに20回参加。弟さんも何度もワークショップに参加。現在は、データサイエンティストとしてお勤めされている。
 

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佐野佳則さん
CAMPワークショップに24回参加。ファシリテーターとしてご参加いただき、こどもたちをサポート。現在は、企業でeVTOL(イーブイトール)の開発に携わっておられる。
 

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松村歩美さん
CAMPワークショップに24回参加。ご兄弟も参加くださっており、大学生の頃はご自身がCAMPファシリテーター研修会にも参加。現在は薬剤師として勤務されている。

 
 

第1部のご講演内容をふまえ、安斎様のインタビュー調査にもご協力いただいたCAMP卒業生4名にも参加いたき、クロストークをおこないました。

はじめに、CAMP卒業生に向けて、当時のインタビュー調査の際に覚えているエピソードや第一部の講演に対しての感想や質問をお聞きしました。
 

 

CAMPワークショップに参加する中で印象的だったのはファシリテーターの存在。みんなが楽しめるようにするのに大切にしていることはあるか。(木村さん)

ファシリテーターとしては、「あの人がいたからうまくできた」と記憶に残ってしまうとよくないので、こどもたちの自発的な活動に任せて黒子になるのが大事だと思っている。だが、ファシリテーターが見守ってくれるからこの場所が安心だという長期的な関係性もあり、その塩梅を考えていくのがファシリテーションかもしれない。(安斎氏)
CAMPワークショップはあくまでこどもが主役なので、ファシリテーターはサポーター。CAMPファシリテーターには「3分待つ」という言葉がある。(新谷)
一般的に大人はどうしても手伝ってしまいがちで、相当こどものことを信じていないと待つことはできないので、CAMPの特徴的な部分でもある。(山内氏)

 

CAMPにはありとあらゆるものが用意してあって、何をやってもいいというところが記憶に残っている。田岡氏のレゴの活動だが、実際問題仕事を楽しく感じるというのも難しいことだと思う。どのように楽しさと仕事を結び付けていったのか。(松瀬さん)

楽しいところは人によってポイントが違うので、自分がどこを楽しいか知っていることが大事。仕事を成り立たせるためには、楽しい・心地いいことと厳しいこととのバランスを自分で取る努力をすること。もう一つ、やった先に何があるのかを考えてもらうようにしていて、目的として何があるのかをつなげること。(田岡氏)
ファシリテーターの経験者としては、CAMPワークショップはあくまでこどもが主役なので、ファシリテーターはサポーター。CAMPファシリテーターには「3分待つ」という言葉がある。(新谷)
一般的に大人はどうしても手伝ってしまいがちで、相当こどものことを信じていないと待つことはできないので、CAMPの特徴的な部分でもある。(山内氏)

 

CAMPファシリテーターはこどもと同じ視点に立って話してくれていて、自分がこどもと接する時もその視点を持つようにした。こどもも企業で働く大人も、ワークショップにおいては楽しさを追求したうえでゴールに結びつけていくところは一緒だと思うが、こどもと大人で違うポイントはあるのか。(松村さん)

利害関係が多層的であるところが一番の違い。こどもは楽しんでいい学びになっていればよい。企業の場合、費用対効果を求められてしまう。ワークショップの目的や何をOKとするか定義しつつ、プロジェクトをうまく運ぶ必要があり、その複雑さがファシリテーターとして違うポイントだと思う。(安斎氏)
人事の観点から言うと、大人の学びには理由がいる。実施した際に楽しかったで終わらないように実施前後の説明や仕掛けは気にして活動している。(田岡氏)
会社の上層部から投資効果はどうなんだと言われるが、一度ワークショップを体験していただくとやってみようとなる場合もある。(安斎氏)
どのようなロジックで説明し、企画から実施したのか?(山内氏)
資生堂のTRUST8は、定量的な効果や投資対策効果の話ではなく、このワークショップに必然性があるかということを丁寧に説明した。TRUST8の要素について、自分の視点から読み替え、葛藤することで自分にとっての意味を考える状況をつくることができるとお話し、上層部の方に納得いただいたという認識を持っている。(安斎氏)
企業理念などについて、自分の手触り感のあるものにするための仕掛けとして全社にこのワークショップを展開ができた。ワークショップ以外の取り組みとして、TRUST8の実践度を、自己・上司・部下からの多面評価をもらいフィードバックの機会をつくっている。スコアがあまりよくなければ、新たな理解浸透策とか、行動原則を発揮しやすくなるうような育成的な施策などをおこなうことにしている。(田岡氏)
浸透させていくうえで、反発をシュミレーションし、やらない理由をあらかじめつぶしていくリスクヘッジをしていた。(安斎氏)
企業の特殊例のように見えるが、これは一般的だと思っており、ワークショップはあるグループがあるコストをかけてやっている。こども向けのワークショップも同じで、見えていないがお金がかかっていて、それを出しているステークホルダーがいる。あるグループとステークホルダーとがどう対話するか、という点は参考になるのでは。(山内氏)

 

CAMPワークショップには、初めから興味のあることを深堀りするような形で、同じワークショップに7回も参加していた。こども向けワークショップと大人向けワークショップについて、参加する側から見て1回の参加で得られるものはどのような差があると思うか。(佐野さん)

こどもはラーニング寄りで、大人はアンラーニング寄りだと思っている。アンラーニングというのは、1度学んだことを忘れたり問い直したりする学習棄却のこと。こどもは未知なものが多いので新しく知ったり気付いたりする体験を培っているが、企業でワークショップが必要とされる場面は染み付いてしまったやり方や当たり前を捨てたり、今まで知らなかった多様な人を知って衝撃を受けるような時と考えているので、得られるものというより学習の価値が違うという感覚。(安斎氏)

 

ここからは、当日の視聴者の方からいただいた質問等も交えながらお話いただきました。

 

楽しいことと意見の対立の葛藤を同じワークショップに盛り込むことへの難しさを感じているが、こどもたちの解決能力を信じて割り切ってしまうべきか葛藤している。(CAMPファシリテーター経験者から)

CAMPではワークショップのプロセスを大事にしているので、こどもがワークショップの中で楽しいと感じることも、前回失敗したから次にこうしたいと感じることも、長い目で見てこどもの気持ちや行動を尊重したいと考えている。(新谷)
大人の場合は空気が読めて、落としどころを見つけてしまいがち。意見の対立があって時間内にアウトプットできない場合はそれでも結論を出すかをファシリテーターが場に投げかけてもよいのではないか。意見が違って対立になること自体が価値のある事だとも思うので、無理に結論をださないということもありだと思う。(田岡氏)
葛藤を乗り越える楽しさもCAMPで大切にしていると思っている。葛藤状況がないと「楽しい!が人を育てる」に到達できないので必要不可欠な要素で、CAMPではプログラムデザインの段階から葛藤レベルの調整をおこなっている。長い目で見ながら葛藤をポジティブに捉え直せるといいのかもしれない。(安斎氏)
葛藤で議論するプロセスが重要かもしれない。みんなそれぞれ意見があってよくて、意見を取り下げても私の価値は下がらない。お互いが認め合っているという前提が必要で、心理的安全性を担保するためには小さい頃から他者や多様な文化を認め合うことが大事な基盤になる。(山内氏)

 

大人とこどものワークショップについて、クロスオーバーしていく必要があると話たが、それぞれの立場から一緒にやっていくとなるとどのような可能性になるのか。(山内)

企業で両利きの経営が求められることもある。こどもならではの観察の視点が、企業にとって狭い視野が広がったり人材育成の場になったりすることもある。閉じていた事業の視野を広げ、イノベーションの目をつくっていくことを組織学習というが、CAMPがその交錯点となるなど新しい形となるかもしれない。(安斎氏)
未来の事をこどもにプレゼンしてこどもから賛同を得られるか、ということをしている話をきいたことがある。大人やこどもの垣根を越えて、企業の中にいない存在とコラボレートする多様性は大人側にとってメリットや面白さがあるのでは。こども側を考えてみると、大人とこども同じ目線で同じことを考えることで、こどもたちに見えてくる世界もあるかもしれない。(田岡氏)
どちらもインクルーシブワークショップ。今後CAMPでやってみてもらえたら。(山内氏)



第2部 これからの企業の次世代育成 ~社会貢献の視点から~


パネルディスカッション

 

ご登壇者

鈴木正人様 × 佐藤寛之様 × 佐藤利也
モデレーター:山内祐平様

 


3社のパネリストに登壇いただき、まずは各社における社会貢献活動の考え方や具体的な活動内容についてご紹介いただきました。そのご紹介内容を踏まえて、企業における社会貢献活動と人材育成の関係性などを山内様にモデレートしていただき、ディスカッションをおこないました。

 

 

鈴木氏

鈴木正人様
NECネッツエスアイ株式会社 コーポレートコミュニケーション部 サステナビリティ・SDGs推進グループ 担当課長

 

会社として社会を支えてきた経験や技術を伝えることを通じた、次世代の人づくりへの貢献に取り組みをご紹介いただきました。特に、南極の観測事業に参画している実績をもとに、南極における活動の一端を題材にした次世代育成活動「南極くらぶ」で各地の小中学校にて出前授業を実施されているお話を伺いました。

 

 

佐藤氏


佐藤寛之様
マルハニチロ株式会社 経営企画部サステナビリティ推進グループ 課長役

 

地域社会との共存・共栄を掲げ、食育、環境、地域貢献の3つを主な活動として、次世代を含めて食の大切さや健康に貢献し、持続可能な自然環境保全と地域社会の発展を目標に活動へ取り組んでいらっしゃいます。特に、企業特性を生かしたこども向け食育活動として、魚の調理を実際に経験する料理教室などの活動についてご紹介いただきました。
 

 

 

 

SCSK佐藤


佐藤利也
SCSK株式会社 サステナビリティ推進部 部長

SCSKは「サステナビリティ経営」を推進しています。「豊かな未来社会」「安心安全な社会」「生き生きと活躍できる社会」を実現するには人の幸せや人を大切にすることが重要であり、その観点から会貢献活動に取り組んでいます。全国のSCSKグループの各拠点でCAMPワークショップを開催し、地域創成への貢献、社員と地元の大学生がファシリテーターとして活躍するなど産官学の連携もふまえた活動であることを紹介しました。

 

 

 

ディスカッションでは、モデレーターの山内学環長より、各社の取り組みについて、さらに深堀し、企業の社会貢献などへの社員参加を通じて、どのように人材育成につなげていくべきか、貴重な意見交換の場となりました。

 

各社でおこなわれている社会貢献は、それぞれ企業としてどのようなメリットがあって活動しているのか?企業として、どのようなものが成功だと考えているのか。

SCSKとしては、事業とは関係ない活動なのではなく、長期的な視点で社会貢献活動をおこなうことで人や能力が育成され、社会全体に広がり、それが自分たちの事業につながってくるものと考えている。(SCSK 佐藤)
何がゴールなのかというのは常に考えているところ。現在の活動は事業につながるところではあるが、様々な機会の提供により次世代、さらにその次世代へと食文化や地域活動を継承していくというのが大事だと考えている。(マルハニチロ 佐藤氏)
将来的なステークホルダーの確保ということもあるが、社員に向けての啓蒙活動というなかでは、社員が社会課題を解決するための活動、という伝え方をしており、様々な情報を得てアンテナを高くしてほしい、そういった活動にしていきたいと考えている。(NECネッツエスアイ 鈴木氏)
いずれも言葉は違うが内容が重なっていて、長期的視点に立っている。企業ではこの視点を持つことは非常に難しいことで、このセクションだけが許されていることかもしれない。(山内氏)

 

今後、次世代育成の活動が広がっていくためには何が必要なのか。

社会貢献の各社担当者は、企業秘密を持たずに次世代を含めて企業同士で協力しあうことで垣根を超えた活動が実現でき、地域課題の解決ができるのではないかと考えている。一企業ではできないことを企業間連携で達成すれば、よりハッピーになれるのではないか。(NECネッツエスアイ 鈴木氏)
一企業にできることは限られているので、他企業でも同業他社だけでなく、異業種と手を組めば様々なアイディアや学びが生まれて、活動が広がるのではと考えている。(マルハニチロ 佐藤氏)
CAMPの軸で考えると、様々なNPOや企業とコラボレーションしてワークショップを独自につくりあげてきた。そういった活動の展開を協力しあったり、地方で活動する際は地域の大学と協力するなど、「自社単独で開催する」という形ではなく、他の企業・教育団体と一緒に開催するという形にすることで広がっていきやすいと思っている。(SCSK 佐藤)

 

「第1部では大人向け・こども向けワークショップの境界を超えるという話があったが、第2部では企業や業種を超え、様々なステークホルダーが力を合わせて環境をつくっていくとう話を聞くことができました」という山内様の言葉で、パネルディスカッションが終了しました。


これからのCAMP


 

最後に、これからのCAMPについて発表いたしました。 

 

 

これからのCAMP

 

CAMPは、2001年4月に「高度情報化社会はこどもたちが先導する」「未来のことは、こどもたちに聞くのが一番」の言葉がきっかけでスタートし、現在までワークショップを中心とした活動を続けてきました。
当初から社会は大きく変化し、VUCAと呼ばれる時代になっています。 
こういう時代だからこそ、私たちには新しい現実を柔軟に受け入れ、未来を切り開く力が求められています。 
そのために、CAMPは「楽しい!」の気持ちをきっかけに、未来につながる力を育み、ワークショップを通して、みんなで学び合う社会の形成が必要だと感じています。現在はその実現のため、新たな3つの取り組みを進めています。 
 
①    場所のひろがり~オンラインワークショップ~ 
昨年度よりオンラインワークショップを開発・開催しています。
既存のプログラムを単純にオンライン化するのではなく、CAMPのコンセプトを堅持し、オンラインならではのプログラムとして新たに開発し、日本各地および、海外からもこどもたちが参加し、コミュニケーションの輪をひろげることができるようになりました。 
 
②    目的のひろがり~自分コンパス工房~ 
VUCAな時代となってきたことを受け、これからの時代を生き抜く力も培う必要があると考え、社会課題を考えながら、これからの自分の軸となる価値観を見出すことを目的に、人間形成の一助となる高校生・大学生向けプログラム「じぶんコンパス工房」を開発しました。 
 
③コミュニティのひろがり~「こどもとつくる、夢ある未来」プロジェクト~ 
これからのCAMPが目指す「みんなで学び合う社会の形成」のため、その礎となるワークショップをSCSKグループ社員と共につくるプロジェクトを進行中です。 
新たなワークショップ開発に向けて、社員からワークショップのアイディアを募り、コンテストを実施する予定です。
そして、そのアイディアをワークショップとして社員とともに開発・実践していく予定です。 
 

CAMPはこどものたちの活動には変わりありませんが、これからはさらに活動を発展させ、新たに『CAMPLUS(キャンプラス)』と位置づけこどもからおとなまで活動の輪をひろげ、みなさまと共に夢ある未来につなげていきたいという思いを最後に、シンポジウムを終了しました。
 

 

全体

 

 



 

当日は多くの方にご視聴いただき、各ご講演やクロストーク、パネルデイスカッションでは多くのご質問やメッセージを頂戴しました。 
また、事後アンケートにおいても温かい言葉を多くいただき、CAMPを元からご存じの方からの激励や、初めてCAMPを知ったという方からも感心をお寄せいただき、CAMPの20年間の活動をより多くの方に知っていただける機会となりました。 
 
本シンポジウムにご参加いただいた方、またこれまでCAMPと関わってくださった全ての方に向けて、あらためて御礼申し上げます。 
20周年を迎え、これからもさらに活動の輪を広げていくCAMPを、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。